発達障がいをもつ子供が一人暮らしをしをするために必要なスキル

療育子育て

発達障がいをもつ子供が
一人暮らしをするために必要なスキル

いつもお世話になっている発達支援センターの相談員から
【一人暮らしをする生活に向けた講習会】の案内を頂き、参加してきました

子供の年齢がまだ小学生の私にとっては、子供が一人暮らしをする日はいつやってくるのか?
20歳?25歳?30歳?

まだ未知の領域ですが、私は子どもが生まれた時から

『早く自立して家を出て行ってね』

と考えていた母親なので、息子が【障がい】と診断が出た時には

子供が家を出て行く日はやってくるのか?私が一生子供の面倒を見るのか?
親亡き後は、どうするのか?

と悩んだものですし、どの親も子供の自立生活について不安や悩みを抱えています

「いつかは自立した生活をしてほしい」
「できるだけ早く自立した生活をしてほしい」
「ママの自由な時間を1日でも早く!」

そう考えて子育てしている私なんです

でも実際に、自立した生活を送るスキルを身につけられるのはいつになるのか?
どこまでスキルを身につけさせたらいいのか?
サッパリ予測がつきません

まだまだ今は、目先の中学・高校への進路や
息子がどんな仕事をしたいと考えるのか、就労先がどのような場所へ決まるのか

その事しか考えられません

ですが、障害を持つこどもが自立した生活を送るために

具体的にどんな課題が出てくるのか?
どんなことをできるようになっていると役立つのか?

を知っておくと、時間をかけて教える事ができます

講習会に参加して、親はどんな心構えをしておけばいいのか
具体的な学びがありましたので、ブログにレポートとしてまとめました

あなたの療育子育てにも参考になれば嬉しいです

講習会では、3名の方から以下の話がありました

1 一人暮らしを始めた当事者の話
2 発達支援センターの職員より~当事者から多く受ける相談内容~
3 支援施設職員より~制度~

一人暮らしを実現させた Iさんご本人の話

現在、就労をしながら一人暮らしをしている Iさんは、一人暮らしを実現して2年目です

● 一人暮らしをしたいと思った経緯
● 一人暮らしをするまでにしてきたこと
● 一人暮らしをしてみて大変だったことや良かったこと

についてお話しくださいました

《Iさんについて》 *  *  *

・療育手帳B1
・特別支援高校を卒業後、就労移行支援事業所を利用と同時に
グループホームでの生活をスタートする
・グループホーム生活と就労移行支援の訓練を2年間経て、就職
・就職移行支援事業所のフォローやジョブコーチ支援を受け、勤務安定
・一人暮らし生活へ向けて、準備期間に1年半
・グループホームの生活を5年間経験し、一人暮らしを実現する

*  *  *  *  *  *  *

『グループホームはどんな生活でしたか?』

5人のホーム生と生活する

自分で起床し、出勤時間に会社へ出向き、仕事を終えたら帰宅する生活

18時夕食

仕事以外の時間は趣味の時間を過ごしたり、洗濯などの家事をする

門限が21時と決まっていた

『グループホームの良かったところは?』

友人ができたこと

洗濯など、一人で生活するための準備ができた

グループホームでは、幅広い年齢層の人と生活を送ることになる
自分でできる家事は自分でする

といった生活のようです。
お手伝いをしてくれる管理人さんのいる、シェアハウスといったところでしょうか

親の気持ちとしたら、子供が自立生活を送る場所に管理人がいたり、
誰かと一緒に生活をしてくれていると安心できます

ただ、本人にしたら “一人の時間” が欲しい時もあるでしょうし
“自分が出かけたい時に出かける” 自由が欲しいと思うのは当然よね。

と納得しました

また、自閉症を持っていると、他人と関わることは疲れますから
職場で気を使って疲れているのに、帰宅しても他人と共同生活を送る場では
心からリラックスして日々を過ごせることは難しいですよね

人と居る事が好きなタイプの人は、合っているでしょうけれど
私の息子の場合は苦手だろうな~とも思いました

それに、他人と生活を共にするわけですから
相性の合わない他人と一緒になることだってあるかもしれません

それは、ホームに入ってみないと分かりません

相性の合わない人と、一緒に生活することはストレスがかかりますね

親の安心や親の想いと、当人の気持ちを合わせる事は
今後ずっと発生することだと受け止めました

『なぜ、一人暮らしをしたいと思ったのか』

いつか自立しないといけない気持ちがあった

グループホームが職場までの距離が遠い(通勤2時間)

門限があり、したいことがあっても出来ないことがあった
(職場の人や自分が所属する陸上チームからの誘いを受けると門限を過ぎてしまう)

働く事で貯金することができた

自立心が芽生えているなんて、素晴らしいIさんですね
普通の子供たちでも「家が楽でいい」といって、一人暮らしをしない人が多くいるのに・・・

そんなIさんになるように、ご両親はどのように育てたのかが気になりましたし
私も息子自身から「一人で暮らしたい」というような子供に育てたいと思いました

『1人暮らしを始めるまでに大変だったことは?』

・グループホームの職員や、職場の店長・相談員など、周りの人へ理解してもらうこと

・理解の後の準備(一人暮らしに必要な家電類などの準備や引っ越し代金など)

・お金の準備 「300万円貯める決意をする」

➡ 300万円と決めた理由は、毎月ぎりぎりの生活費で一人暮らしをすると
もし自分が病気をして給料を得られない期間が発生した時の生活費や
将来の為、生活に余裕のある金額を貯めておこうと思った

グループホームで生活をしている時は、生活費用がほとんどかからないので、資金を貯める事ができた

・一人では賃貸住宅を借りる事ができないので、相談員と一緒に
家の条件など含めて不動産屋と相談する

➡具体的な家の条件とは、家賃が月4万ぐらいの賃貸住宅を探すと
熱費や生活費などにかかるお金を含めても、ゆとりある生活を送ることができる

・職場の近くの家⇒職場から10分弱の場所に住むことができた

=家を借りるために必要な証明を準備したもの=

・年収の分かる会社の証明
・療育手帳
・年金手帳

『一人暮らしを始めて良かった事』

好きな事が、自由にできる!

門限にしばられず、外出できる

自分のペースで生活できる

誰にも拘束されず、自分の自由に生活を送ることができるのは
誰しもが求める幸せですね

障がいがあるから、いつまでも守られる存在ではなく、自分でもできる!
周りの者は心配だけれど、本人の意思を尊重しないといけないですね

『一人暮らしを始めて大変だったこと』

家事:ヘルパーが週2回、自宅に手伝いに来てくれるので、苦手な事をお願いした

*書類の確認:自宅に届く書類関係で、分からない内容のものを“社会福祉協議会”に相談するサポートをうける

一人暮らしをし始めた時は、届く書類が多かったし、書類によっては、提出の締め切りが早い物もあって、大変だった

お金の管理:自分でお金の管理を出来るのかが、心配。無駄遣いをしてしまわないか?だまされないか?お金を預けるサポートを受けている

契約:NHKへの加入の営業が来る。どうしたらいいのか分からないことを、ヘルパーさんへ相談した。
NHK料金については、療育手帳があれば、免除になる

 

=サポートしてくれる人たちがいる=

*家事・買い物 ➡ ヘルパーさん

*生活に必要な書類の確認・金銭管理 ➡ 社会福祉協議会

*何かあったときの相談 ➡ 地域の相談所・相談員

*休日など楽しみの時間 ➡ 友人

Iさんの担当職員は、こうおっしゃっていました

“一人暮らしをするために、自分ですべてのことをできるようにならないと・・・”
と、考えなくてもよい

自分の苦手なところを知って、苦手な部分をサポート受けて生活をすればいい
というお話でした

 

一人で生活をするという事を想像すると、働きながら日々の生活の家事を、全て自分でしないといけない事は当然だし
急なトラブルにも臨機応変に対応しないといけません(台風で停電になってもあわてないなど)

寝坊したら出勤に遅刻するし、失敗した時も全て自己責任で行動しないといけません

障がいのある人が臨機応変に行動することは難しい内容もあるけれど
サポートを利用して本人の意思を尊重する事は大事だと思いました

 

そして、一人暮らしをしてみたいなら
1度体験をさせてみて、難しかったらまた家に帰ってきたらいい

また、もう一度一人暮らしをするための練習を親もとやグループホームですればいい
とも思いました

私自身、大学生の時に家をでて、実家にいる時にはどれだけ親が周りの環境を
整えていてくれたのかを気が付く事ができました

トイレットペーパーだって、自分で買いに行かないと誰も用意してくれません
体調を崩した時だって、誰も看病してくれません

親のありがたさが分かります

一人で生活するために、できるだけ困らないように前もってどんな準備をしておくのか
実体験を持って練習するしかないですもんね

 

親が年老いてから、子供が始めて一人暮らしを強いられる方が本人は困るでしょう

子供が若いうちから一人で生活をする経験を積ませておく事って大事だと思いました

発達支援センターの相談員が多く受ける
相談内容についてお話下さいました

生活に関する相談

【お金の管理】

・1か月の生活にどのくらいの金額が必要なのかが分からない
・無計画につかってしまう
・借入をしてしまったり、ゲームの課金を大幅にしてしまう

これについては、早い段階から子供にお金の使い方や金銭感覚を練習させる必要があるなと思いました

普通の人でも、一人暮らしをはじめると、無駄遣いをしてしまいますよね
給料日は気持ちが大きくなって、リッチにお金を使う経験した人は多いはずです

障がいのある人が、1か月にどのくらいお金を使うのかを想像するのは難しいことです

食費はこのくらい、光熱費はこのくらい。と、予測を立てる事や
自分が実際にどのくらいお金を使っているのか、知る事と、練習が必要ですね

私たちママだって、結婚生活を始めた最初は、毎月どのくらいのお金が必要なのか
やりくりが分からない所から始めましたよね

それを子供と一緒に丁寧に教える作業をしようと思いました

【荷物の管理】

・外出時、何を持って行けばいいのかわからない
・持って行くものを自分がどこへ置いたのか分からなくなる
・どう、片付けをしたらいいのか分からない
・物をなくしてしまう
・忘れ物をしないためにと、かばんにすべての物を詰め込んで持ち歩く癖がついてしまう

玄関先に、持ち物メモリストを貼り付けておくなど対処をしたり
“毎日必ず持ち歩くもの” “会社へ行くときに持って行くもの”など、決めておく練習も必要ですね

私でも、“旅行へでかける”なんて日常と違う所へ行く以外では、持って行くものは同じものです
財布・手帳・ペン・スマホ・ティッシュ・ハンカチ・水筒・リップ

子供にとって、どんな持ち物が必要なのかある程度限定しておけば、出勤時と普段用の鞄を変えるだけですね

【片付け・整理整頓】

・部屋を片付けられない
・どこへ置いたらいいのか分からない
・ゴミの日が分からないから捨てられない
・どのくらいで掃除をすればいいのかわからない
・毎日洗濯しない物(シーツなど)いつ洗濯したらいいのかわからない

スケジュールを確認する癖をつけたり、本人が使いやすい配置を一緒に決める

掃除する回数や曜日を決めておく

など、対処は考えられるけれど、それ以前に今からでも
生活している家の環境はこうなっているんだよ知っておくことも大事だと思いました

自分がどういう仕組みの中で生活を送っているのか知らない子供たち

だってすべてお母さんがしていますからね
部屋の掃除や衣類の整理整頓、掃除、ゴミ出し

子供の知らない所で親がしているし、親もわざわざ子供に言いません

私の息子は買い物へついて来ることが嫌いだから、いつシャンプーがなくなって
いつ補充されているのかなんて考えてすらいないでしょう

子供に話す、子供に手伝いをさせるなどの体験を通して
なぜ快適な生活を送ることができているのかを知識として入れていこうと思いました

 

【予定の管理】

・予定を詰め込み過ぎる
・約束した日を忘れる
・日・一週間・月間の見通しが立てられない
・朝起きてから出勤するまでの時間内にどんな作業をこなすのか(食事・洗濯・歯磨き・着替え)

【体調の管理】

・疲れているのかが分からない
・不調だと会社の人に伝えられない
・夜更かしして寝不足のまま出勤する
・気持ちの浮き沈みのリズムがある場合は、自分の事を知るのも大事
・医師に自分の体調をうまく伝えられない

【移動の能力】

・バスや電車の使い方
・満員電車が苦手だったり、バスのにおいが嫌だったり。の対処法

【身だしなみ】

・TPOや季節に応じた服装が分からない
・髪型や髭などの衛生面
・手前に片付けている服ばかりを着るから、洗濯していたとしてもいつも同じ服を着ている

【各種手続き】

・手帳や年金・自立支援医療などの申請・更新が分からない
・分からない物をそのまま放っておいて手続きが出来ていない事もある

すべててにおいて、息子に当てはまりそうなことばかり・・・。

一つ一つ、教えることは膨大です(^-^;

人間関係に関する相談

【近所づきあい】

・近所って、どの範囲まで付き合えばいい?明確に分かりづらい
・自治会の加入や近隣トラブルが発生した時どうするか
・冠婚葬祭の付き合いや、防災の付き合い

【親族や知り合い】

・誘いを断れない または 一方的に関わりすぎる
・話題の合わせ方が分からない
・親密さと悪意・好意の違いが判断できない

【職場の同僚等】

・必要な事を言えない➡体調が悪い事を伝えられない
・質問や聞き直しができなくて、分からないまま作業をしてしまう
・電話で要件を言えない
・飲み会でのマナー
・お土産を配る範囲が分からないなんてことも

【ネット上のつきあい】

・写真をアップする
・知らない人と実際に会う
・人の文句を書き込みして炎上
・お金を使ってしまう

障がい者が自立や一人暮らしをする中で、相談員がしているサポート

・金銭管理
・予定管理
・職場の人間関係

相談員が、おっしゃったことは

生活するスキルを全て身につけていなくても以下のスキルを身につけておくことが最も大切

・体調について人に伝えたり、通院の管理ができる

・家族以外に何でも話をすることができる1人でも多くいること

・自分は何が好き・得意か 反対に何が苦手でどういう時に不安になりやすいのか、自分自身の事を知っておく

こうしてお話を聞くと、教えられることには限りがあると思いました

子供も自分で考えて行動しますから、思わぬこともするでしょうし
周りの環境から本人の意思と関係なく問題も発生するでしょう

だから、

困ったことが起こったときに、一人で悩んだり一人で解決しようとせずに
必ず誰かに相談する力を身につけることが大事だし、手っ取り早いと思いました

そして、その相談する相手は親でもいいし
子供だって親に言いたくない事だってあるでしょうから
相談できる他人の力が、これからもっと多く必要になるだろうと想像できました

必用な支援を受けて、お返しできるところでお返しをしようと、より思いました

相談支援事業所・障がい者就労支援センターの
職員の話を受けて ~まとめ~

実際に一人暮らしをしている障がい者の現状は、本人が一人暮らしを始めたいと思って始める人よりも
親の高齢化などの理由によって迫られたタイミングで一人暮らしを始める人が多いという現実があるそうです

本人の気持ちで動いているわけじゃないんですね

親としたら心配ですし、何かあったら親も大変ですから
障害のあるこどもと一緒に生活していることが安心だし、楽な道ともいえますね

 

障がい者を取り巻く制度がこの20年でずいぶん変わりました
制度が整い、法律ができ、法律は改善されています

まだ、たった20年と、最近やっと整ってきた制度ではありますが
障がい者も自立した生活を送れるサービスは年々増えています

それは、息子が利用してきた児童発達支援施設や放課後児童デイサービスの増加を見て実感します

 

普通の人でも、生活保護がある訳です
餓死する人がいない最低限の生活を送ることができる日本という豊かな国ですから

“親がいないと子供は生きていけないんじゃないか?” という不安のないよう、制度はより良く整ってゆくでしょう

生活に不安のない環境が整っていることを期待するとともに、障がいがあるから何でもしてもらう立場になるのではなく

“できる事は自分でやる

できない、苦手なところを知って、サポートを受けながら自立した生活を送る”

こちらの生き方ができるようになればいいと思っているし
そうできるように育てないといけないなと、改めて考えさせられました

ただ、制度は国が法律を整えれば整備されますが
一般の国民が障がい者に対する受け止め方を変える事の方がよっぽど難しいとも思います

人々の意識が、多様性を受け止める国民性に変わる未来が来ることを望んでいます

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