「私の絵には価値がある?」SNSで他人と比べて悩んだ高校生との話
先日、高校生の生徒さんから、絵についての相談を受けました
「自分の絵に価値があるのか分からなくなってきた」そんな悩みでした
今はSNSを開けば、自分と同じ年齢の人が描いた絵を簡単に見ることができますよね
そこには、“フォロワー数、いいねの数、コメントの数”評価まで数字になって目に入ります
「あの人は同じ年齢なのに、こんなに上手い」
「自分は一生懸命描いているのに、全然いいねがつかない」
「このまま続けて、本当に上手くなれるのかな」
絵が自分にとって大切なものであればあるほど、他人と比べたときのショックも大きいのだと思います
⇒ SNSの数字と、絵の価値は同じではない
私はまず「SNSの数字だけで、自分の絵の価値を決めなくていいよ」
という話をしました
もちろん、「気にしなくていい」と言われたくらいで気にならなくなるものでは無いのは分かりますから、その理由も話しました
SNSで反応を得るためには、絵そのものの技術だけではなく、題材、構図、流行、投稿の仕方など、さまざまな要素が関係しますし、パッと目を引く表情やポーズ、人気のある題材など、たくさんの人に見てもらいやすい表現もあります
だから、【数字が大きい=その人の絵そのものの価値が高い】、と単純に比較することはできません
そこで私は、その生徒さんにもう一つ聞きました
「あなたが悩んでいる “絵の価値” って、自分自身が納得できないこと? それとも、人から評価されないこと?」
なぜこれを問うたのかというと、この二つは、少し違う問題だからです
⇒自分の成長は、毎日見ていると分かりにくい
もし、
「思うように描けない」
「なかなか上達している気がしない」
という自分自身との葛藤なら、これは絵を描き続ける限り、何度も何度も出てくる悩みだし、正直一生ついてくることです
絵の上達は、「昨日できなかったことが、今日突然できた!」
という分かりやすいものばかりではなく、半年、一年と描き続けて、以前の作品を見返したときに、
「あれ? 前より描けるようになっている」と気づくことの方が多いものです
だから、今できないことだけを見るのではなく、「半年前の自分にはできなかったけれど、今はできること」も見つけてみよう、と話しました
それでも苦しくなったら、一度絵から離れてもいいし、絵以外にも、自分の気持ちを回復させられるようなストレス発散方法を持っておくことも大切です
⇒「あなたの絵が好き」と言ってくれる一人を大切に
もう一つは、他人からの評価です
人に見せる以上、「かわいい」「かっこいい」「面白い」と思ってもらえるかどうかは、確かにあります
仕事として絵を描く場合は特に、「自分が描きたいもの」だけではなく、「見る人が何を感じるか」を考えることも必要になります
でも、たくさんの人から一瞬「上手いね」と言われることと、「私はあなたの絵だから好き」と言ってくれる人がいることは、少し違います
たとえ一人でも二人でも、「あなたの描くものだから好き」と言ってくれる人がいることは、描き手にとって、とても大きな力になるから、数字ばかりを見るのではなく、そんな人との出会いを大切にして、自分の作品を見てくれる人のために描き続けてほしいと伝えました
⇒「好きなもの」があることは強みになる
その生徒さんには、メカを描く事が好きという、はっきりと好きなジャンルがあります
私は、「それはあなたの強みだから、大切に育てたらいいよ」と強く話しました
何を描けば評価されるか?ばかりを追いかけるより、「私はこれが好き」というものを持って描き続ける、その積み重ねが、やがてその人らしい絵につながっていくのだから
絵の悩みも、一緒に考えられる場所でありたい
生徒さんが高校生くらいになると、アトリエでの会話も少しずつ変わってきます
「どうやったら上手く描けますか?」という技術的な質問だけではなく、
自分には才能があるのか。
このまま絵を続けていいのか。
進路をどうするのか。趣味として描く?仕事にできるのか?
人と比べてしまって苦しい。
絵がその子のアイデンティティの一部になっているからこそ、絵について悩むことは、自分自身について悩むことにもつながります
私自身も、ずっと順調に絵を描いてきたわけではなく、むしろ美術大学時代も成績は中だったし
上手くいかなかったことも、人から厳しい評価を受けたこともあります
そして、目指していた漫画家になることができなかったという挫折も経験しました。
だからこそ、生徒に伝えられることもあると思っています
アトリエは絵の技術を教える場所です
でも、長く通ってくれている子どもたちが成長していく中で、絵を描くことで生まれる喜びだけでなく、迷いや悩みについても一緒に考えられる場所としても、生徒たちを支えたいと考えています
今回、高校生の生徒さんと話しながら、改めてそう思いました
